中国の“医療特区” ― 博アウ楽城国際医療観光先行区

作者:TJCC日付:2024-10-24 13:46:44

 

 現在中国では、国をあげて海南自由貿易港の建設に取り組んでおり、海南では多く分野で開放が進められていますが、中でも医療面の開放を担う博楽城国際医療観光先行区に注目が集まっています。そこで今回は博楽城国際医療観光先行区について紹介していきたいと思います。

楽城国際医療観光先行区は、海南自由貿易港にある13の重点園区1つで、その面積は20.14㎢、海南省海市の万泉河の河口あたり、海口市からは約90㎞、三亜市からは約200㎞の場所に位置しています。(下記地図参照)。

 

 

1. 楽城国際医療観光先行区の発展概要

主な産業領域として特許医療、健康管理、リハビリテーション、医療美容、アンチエイジングなどが含まれ、観光客に向けて身体検査、健康管理、医療サービス、リハビリテーション、健康増進などを提供する医療産業チェーンが形成されています。

a) 20132月、国務院は正式に海南博楽城国際医療観光先行区を設立するとともに、9つの優遇政策を与えました。これらは大きく「4つの特別許可」とまとめることができます。

・医療の特別許可:医療技術、医療人材、医療機器、薬品の進出を特別に許可する。

・経営の特別許可:一部の医療審査権を緩和し、海外資本の進出と経営を許可する。

・国際医療交流の特別許可:国際的な医療交流組織を許可し、医療会議を実施する。

・研究の特別許可:幹細胞臨床研究などの先端医療技術研究プロジェクトを展開する。

b) 20199月、国家発展改革委員会など4つの部署が「博楽城国際医療観光先行区の建設を支援する実施案」を共同で発表し、従来の優遇政策をさらに強化しました。主な政策には、次のような画期的な政策が含まれています。

・中国国内でまだ販売されていない輸入薬品であっても、患者の記録に基づいて合理的な自己使用量を先行区から持ちだすことを許可する。

・中国国内の先進的な公立病院を35軒を導入し、ブランド、商標、技術、管理などの経営を特別許可し、先行区の医療機関に提供する形を模索する。

・リアルワールドデータ(RWD)の応用研究を展開する。

・輸入薬品および医療機器の国家審査センターを設立する。

 

c) 202310月初旬時点で、先行区のすべての政策が実施されており、全方位に渡って進展が見られています。

・新薬や医療機器の導入に関する取り組みは、現在、アメリカ、ドイツなど17か国からの130以上の企業による350種類以上の新薬・医療機器の導入を果たしている。これらは眼科、耳鼻喉科など28の学科を対象としており、医薬品と医療機器が国際水準に達している。

・リアルワールドデータ(RWD)の利用は、先行区に与えられた重要政策の1つで、新薬・医療機器が中国での登録審査を受ける際に活用されている。これにより、世界的な革新的医薬品と医療機器の中国での登録審査時間を大幅に短縮することができ(3-7年必要だったものを4-12ヶ月まで短縮)、中国市場に参入する際のコストを大幅に削減することが可能。現在、緊急的需要のある輸入医薬品と医療機器に関して、リアルワールドデータ(RWD)を使用した試験を行っているものが30種類あり、すでに試験を通過して市場参入許可を受けているものが12種類ある。

・すでに26の医療機関が開業・運営されており、その中には「博一齢生命養護中心」、「慈銘博国際医院」、「上海瑞金医院」、「四川大学華西医院」などが含まれている。さらに、日系を含め、20を超える医療機関が建設中または計画中であり、51の学術専門家チームも導入・契約されている。これにより「公立+民間+国際」という多様で相互補完的な医療産業構造が形成されている。

・新しい医薬品と医療機器を迅速に実用化し、より多くの患者が利用できるよう、20208月に「楽城グローバル特別薬保険」が導入され、海南ではわずか29元で、最大100万元の特別薬の保証を受けることができる。現在、この先行区の特別薬は、北京、上海、黒竜江、山西、河北、湖南、内モンゴル、安徽など、21の省・市・地区の居民向け健康保険商品目録に順次追加されており、現在までに累計3,300万人以上がこの保険に加入している。楽城グローバル特別薬保険の海南版では、最大100%の補償を受けることができる。さらに、海外の保険会社との協力を進め、海外の既存の保険契約を先行区に導入し、先行区の医療リソースと価格面の強みを活かすことで、国外からの医療旅行客を引き付けている。

・中国国内で初めての医薬品と医療機器を集中的に保管するための保税倉庫が設立されている。この倉庫は特別な監督管理方式を採用することで医薬品と医療機器の通関効率を大幅に向上させている。さらに、中国唯一となる緊急的需要のある輸入医薬品と医療機器に対する全プロセス追跡プラットフォームが形成され、特別許可された医薬品と医療機器の全過程に渡ってリアルタイムオンライン監視を実現している。現在までに医薬品と医療機器の不正行為事件は発生しておらず、また患者のニーズに合わせて病院から薬を持ち出すことを認める管理弁法を導入することで患者に利便性を与えている。

二、 博楽城国際医療観光先行区の設定目標

a) 2025年までに、特色ある技術的先進臨床医学センター、先進医療技術研究開発の実用化基地などの分野での大きな発展を達成し、医療技術、医療機器、医薬品について「3分野同時に」世界的先進水準の実現を行なう。

 

b) 2030年までに、医療サービスと科学研究について、中国国内リーダー、世界的先進水準を達成し、産業集積とブランド力が十分に形成し、世界トップクラスの国際的医療観光地、医療科学技術イノベーションプラットフォームを構築する。