【中国雑感コラム】ABC予想の証明
作者:TJCC日付:2020-06-30 09:53:00
中国雑感コラム「ABC予想の証明」
世界中が“コロナ禍”の4月初旬に、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞級の偉業として京大数理解析研究所の望月教授による「ABC予想の証明」が発表されたのをご存知だろうか。2千年以上の歴史を持つ整数論の中で、「最も重要な未解決問題」と言われ1985年に提示されたのが「ABC予想」であり、世界中の数学者を悩ませてきた。
「ABC予想」とは、a+b=cという単純な式から始まる。1以外に同じ約数を持たない正の整数aと整数bの「足し算」であるcと、3つの数a、b、cそれぞれの素因数の「かけ算」であるdの大きさを比べた時、両者にある特別な関係があることを示している。
具体的にa=5、b=27で考えると、cはaとbの足し算なので32。次に、b=27は「3×3×3」と素因数分解できるので素因数は3。同様にc=32は「2×2×2×2×2」で素因数は2。a=5は素数のため素因数は5。すると、かけ算(d)は「5×3×2=30」となる。足し算のc=32と、かけ算のd=30を比べると足し算が大きい。しかし実は、他のa、b、cで試すと、ほとんどの場合、かけ算が大きくなる。「ABC予想」は“足し算がかけ算より大きくなるのはとても珍しい”ということを主張する命題である。
望月教授は2000年に「ABC予想」の証明に着手し2012年に発表、その後7年半を経て証明の正しさが認められた。その証明にはドイツの数学者タイヒミュラーが考案した空間論に、独自の考え方を導入した新理論「宇宙際タイヒミュラー理論」(IUT理論)を10年以上かけて1人で築きあげたのである。数学の最も基本的な要素である足し算とかけ算を分離して新しい数の世界を捉える理論で、その考え方の斬新さから「数学の相対性理論」と称される。これを用いて証明したのである。皆さんも、頭の体操でいくつかの数字で試してみてはいかがだろうか。(NT)
TJCCコンサルティンググループ 田辺尚裕