【中国雑感コラム】世界最大の地域的な包括的経済連携『RCEP』の誕生

作者:TJCC日付:2021-03-29 10:09:00

中国雑感コラム「世界最大の地域的な包括的経済連携『RCEP』の誕生」

近年、世界の各国は貿易の拡大に伴い、数多くのFTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)やEPA(Economic Partnership Agreement/経済連携協定)の締結を進めています。中国も2001年にWTOへ正式加盟以降、各国・地域とのFTA・EPA協定交渉を積極的に進め、着々とFTA戦略拡大を図ってきています。

中でも2020年11月にASEAN10ヵ国及び日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの計15ヵ国によりRCEP協定(Regional Comprehensive Economic Partnership)への署名がなされ、世界最大の自由貿易協定による経済圏が誕生しました。総人口約22.7億人、GDP26兆ドル、輸出総額5.2兆ドルで、世界全体の30%を占めるに至っています。RCEPは他の自由貿易協定と比べ、新しい形の自由貿易協定であり、世界の貿易発展に合わせて協定内容が広範囲に及んでおり、貨物貿易、紛争解決、サービス貿易、投資等の分野に加えて、知的財産権、データ貿易、金融、電気通信等の新しい分野も含まれています。

今回合意した15か国のうち、日本はこれまで中国と自由貿易協定を締結していなかった唯一の国であり、米中貿易摩擦や、新型コロナウイルスによる産業チェーンの不安定な状況のなか、日本と中国がともに含まれる協定が締結されたことは大きな意義があると言えるでしょう。

この協定では、日中両国間の関税率低減が最も注目される点であり、今後多くの業種でメリットの享受が期待されます。中国から日本への輸出の関税率は、ゼロ税率への低減が予定されているものが多く、関連業種のメリットは近いうちに現れるでしょう。また中国が日本から輸入しているものについては、過渡期を経た後でゼロ関税率が適用されるようになるため、少し時間がかかると思われます。RCEPの締結は日中間の貿易に大きな影響を与えるとともに、日本・中国・韓国間の自由貿易協定の交渉を加速させることとなるでしょう。(NT)

 

TJCCコンサルティンググループ 田辺尚裕